オレゴン

 ベトナムなのになぜオレゴン?と思うかもしれませんが、75年以降難民として大量に出国したベトナム人を受け入れた国の中で、もちろん一番多かったのはアメリカで、現在約100万人以上住んでいると言われています。アメリカの中でベトナム人が一番多く住んでいると言われているのはカリフォルニア州で、ウェストミンスターなどオレンジカウンティを中心として集住しており、その地域はリトルサイゴンと呼ばれています。
 アメリカのベトナム人は、その経緯から現在のベトナム政府とは反対の立場に立つ人が多く、1999年の春にはウェストミンスターで、ホー・チ・ミン氏の肖像画を掲げた商店に多数の人が押し寄せ暴力沙汰となり、大きなニュースとなりました。
 これまでアメリカ本土に行く機会がなく、合衆国におけるベトナム人社会を見てみたいなと思っていたところ、最近(2000.1)うまく出張で行く機会がありました。しかし、出張では行く先を自分で選ぶわけにも行かず、行ったところはオレゴンの田舎町。そんなところにベトナム人なんかいるのかなと思っていたのですが、うまいことベトナム料理屋さんと食材屋さんが隣接してあるのを見つけました。
 喜んで入ってみると、やはりそこは南部系の人のようで、メニューには南部の料理が並んでいます。そうした中に、ブン・チャー・ハノイというのが見つかり、ブン・チャー好きの私は喜んで注文したのですが、出てきたのはハノイで見かけるブン・チャーではなく、ブンの上にチャーが載っていて、その上からたれをかけて食べるような南部で出てくるようなものでした。これじゃあブン・チャー・ハノイでなく、ブン・チャー・ナン・ボーだなとぶつぶつ言いながら食べましたが、まあまあのお味でした。他にも、空芯菜炒めがメニューになかったので、お店の人に聞くとここに住んでいるベトナム人だけに出すとのことで、材料の入手が田舎町だと難しいのかなと思わされました。
 隣の食材店では、野菜から肉に至る生鮮食料品から、麺、ヌォック・マム、ライス・ペーパーなどの加工品まで、あらゆる食材が並んでいました。そんなに買う人がいるのか聞くと、この街には中国人とベトナム人は結構住んでいるという答えでした。
 オレゴン州最大の街ポートランドにはもっとベトナム料理屋さんもあるようでしたが、残念ながら訪れる機会がありませんでした。オレゴン州とワシントン州のベトナム人を対象にした週間のベトナム語紙もあり、前期の食材店で無料で配布していたので、もらってきました。これを見た北部出身の方は、ひどいとかぶつぶつ言って読んでおりました。
 時々、今のベトナム政府に反対する集会というのも開かれているようで、そのチラシもありました。なかなか溝が埋まることはなさそうです。