パリ

 ベトナムなのになぜパリと思うかもしれませんが、フランスは1954年までベトナムを植民地としていました。そのため、いろいろな関係でフランスには30万人ほどのベトナム人が住んでいます。
 '97年の晩秋、出張でパリに行ったのを良いことにパリにあるというベトナム人街の探訪に出かけました。時間の都合で(それは仕事で行っていますから)夜になったため、本当の雰囲気を味わえたかどうかはわかりません。しかし、全体がどこか寂しげで、落ち着いた感じがするのは気候のためばかりではないような気がします。パリにいる黒人やアジア人はどことなくみんなおとなしい感じがします。やはり、近年の国民戦線のような右翼組織の躍進などで、人種問題に敏感になっているためでしょうか?それともヨーロッパ社会が未だに階級社会だからなのでしょうか?どちらも影響しているのかなという気がしています。まあ、そんな短時間で分かるわけはないのですが。
 くだんのベトナム人街は地下鉄駅のイタリア広場の近くにあります。最寄り駅は、TolbiacまたはPlace d'Italie。地下鉄駅を降りて、Choisyという通りに中国、ベトナム料理が軒を並べています。
 しばらく街をうろうろしたあと、重たいフランス料理に疲れた胃を休めるため、ベトナム料理を食べることにしました。適当に選んだ店に入って、一人だよと言ってしばらくベトナム人になりすまそうとしたのですが、つたないベトナム語だとそれも立ち行かず、かと言ってフランス語ができるわけでもないので、そのまま片言のベトナム語で女将さんと会話していました。
 入ったお店は

Paris-Vietnam
98 avenue de Choisy 75013 Paris
TEL: 01.44.23.73.97

です。
 そこでふと思ったのですが、パリのベトナム人には北部の人間が結構多いのかもしれないと。ビールを頼んでいきなりでてきたのがHALIDA(ハノイのビール)でしたから。あと、日本であれだけ食べたいと願っていながら、かなえられていないブン・チャーもちゃんとメニューにありました。また、食後にチェーはいるかと聞かれ、チェーはいらない、チャーを下さいと答えてから、チェーって北部ではお茶も意味したなと思い当たったのでした。
 実際のところはどうかわかりません。でも、たまたま入ったお店が北部の料理というのは結構な確率かもしれないと思っただけです。ただ、54年以降、北部カトリック教徒が社会主義を嫌って大量に南部に移住したときに、国外にでた人もいるのかなと想像したのです。あるいは、75年以降北部からのカトリック強硬派だった人がアメリカに移住するよりもフランスを選ぶということがあり得たのか。いずれにしろ、フランスのベトナム人はアメリカに移住したベトナム人よりも表舞台に立つことが少ないような気がしました。
 彼らベトナム人がどちらにしろ、舞台裏といえる立場にいながらも、パリジェンヌがアオザイをファッションとして組み合わせてみたり(普通のフランス料理店のクロークの女の子がアオザイの上だけをジーンズの上に着込んでいた!)、料理にエスニックぽいものが入っていたり(実は寿司もスターターとしてフランス料理にとけ込んでいた!!)、それなりの影響を与えているようです。