葬儀


 ベトナムの葬儀については、以前司馬遼太郎の本の中で、親の死後、葬儀に至るまでなるべく長く間を取り、死を悲しむのが子供としての孝行とあったので、死から葬儀に至るまでは長い時間を取るものだと思っていました。ところが、知り合いの奥さんの親族が亡くなった時のこと、死の知らせの翌日にはもう葬儀が行われたとの話を伺って、本当?と耳を疑ったことが最近になってありました。知り合いに言わせると、ベトナムは暑くて遺体が傷みやすいので死後すぐに葬儀をするのだということで、確かに合理的に考えれば、その方が筋が通っています。どういうことだろうかと考えてみたのですが、司馬遼太郎の本の話しは南部でもう30年以上前のこと、知り合いの方は北部でごく最近の話しと、地域性と時代性の両方が絡んでいるので、今の時点での地域性を検証してみないことには、全般的なことは言えないと思います。

 ここでは、北部での葬儀について、少し取り上げます。
 左の写真は、葬儀会場から埋葬するまでの葬列を撮ったものです。車の前に立っているのは喪主である故人の長男。司馬遼太郎の本にも故人の死を悲しんで現世に留めようとする子供達が、葬列を留めようと遺体を乗せた車を押し戻そうとしながら、葬列が進んでいく場面がありましたが、それと同じような意味か聞いてみたのですが、知り合いはよく分かっていないようでした。
 葬列で白いはちまきをしているのが親族、故人の子供達はそれに加えて、白いシースルーの上掛けを身につけるようです。ベトナムでも中国と同様白は葬儀の色。黒が葬儀などの礼式の色である日本や欧米とは異なります。
 遺体を積んだ車には花飾りがつけられていますが、先端には故人の名が黒い帯に書かれています。
 右の写真は女性遺族の葬儀の装い。白いはちまきは有名なので知っていたのですが、シースルーの白い上掛けの方は、この写真を見るまで知りませんでした。
 よく見るとこの二人の女性は上掛けの下は黒い衣服を着ています。喪主の男性も上は黒のシャツなので、身につける服についても規定があるのかもしれません。
 ベトナムでは最近の開放政策で、習慣や伝統文化の復活もありますので、このあたりの習俗がどのように変遷しているかも非常に興味のあるところです。

 左の写真は、葬儀における習慣の一つで、故人の子供達の上を通って出棺するというもので、知人はこのような習俗があることを知らなかったので勉強になったと言っておりました。
 写真中央が棺、両脇からお棺を持っている人々の足下中央に床に座ったはちまき姿の故人の子供達が見えます。

 

 

 

 

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