バインゴイを作る
 ベトナムの料理は地域によって大きな差が見られます。料理の種類や味付けはもちろんのこと、料理の名前や使う材料の呼び名まで変わって、面食らうこと甚だしいです。
 今回ここで紹介する北部の料理でバイン・ゴイというものがあります。見かけは餃子をでかくしたようなものですが、実際には豚の挽肉や春雨、キクラゲなどを詰めて揚げ、ヌックチャムベースのたれをかけて食べるスナックです。道をふらふらしているときに看板もない店に人がたくさん入っていて、何だろうなとその店に入ったのがバイン・ゴイとの出会いでした。
 僕が99年正月をハノイで過ごす予定と聞いたNguyenさんが、バイン・ゴイを作りませんかと誘ってくれたため、その作り方を見ることができました。なんでも、そのついちょっと前に友人宅で作って食べたのだそうでした。
 というわけで、そのご友人宅にお邪魔して、僕もバイン・ゴイづくりに参加させていただきました。

1.ベトナムの台所
 中産階級と思われるその方の自宅(アパートメント形式、各戸の玄関に厳重なシャッターがある)には、小さめの台所がありました。この写真がそうですが、ちょっと狭めです。これで料理ができるのかなと思ったら、そこはベトナム、料理の下ごしらえのほとんどは、ここではなく床でやるのでした。

 

2.下ごしらえ
2−1.豚肉を挽く
 豚肉を挽くと言えば聞こえは良いですが、実際には包丁でひたすらたたいてつぶすのでした。この写真のように床で作業をやりますので、足が疲れます。最初はベトナム人を見習って、足をそろえてしゃがむやり方をしていたのですが、腿や臑がじんじんしてきて、このようにだらしない格好になってしまいました。とてもベトナム人にはなれません(笑)。
 作業自体はかなり単調です。最初にある程度小さな大きさに切った豚肉を包丁の刃でひたすらたたきます。ちなみにベトナムの包丁はあまり切れ味がよくないので、こうやってたたいても完全に切れたりはしません。逆にベトナム人が日本に来て料理すると切れ味が良すぎて危ないようです。包丁の目的自体が違うので、切れ味の状態も違うのかなと思いました。

 

 2−2.木耳をハサミで切る
 ベトナムの料理では、ハサミが大活躍します。ベトナム料理屋さんで料理をしているのを見るとハサミで揚げ春巻きをばちばちと切ったりしていて、驚いた方も結構いるのではないかと思います(僕は最初驚きました)。
 ここでは、バイン・ゴイの中に詰める木耳をハサミで適当な大きさに切っています。あとの材料がなんだったかは忘れました。
 料理に使うその他の道具についてはよく分かりませんが、まな板は最初の写真を見ても分かるように、丸太をある厚さに切ったような丸いものを使うのが普通のようです。これもどんなものでも良いかというとそうではなく、基準があるようなのですが、それが何かは分かりませんでした。

 

3.詰める(というよりも包むか)
 そうやって、切って、味付けなど下ごしらえした材料を皮に包みます。皮はこれもバイン・チャン(ライス・ペーパー)だったと思っていたのですが、よく考えるとあの柔らかさ、厚み、小麦粉か何かを使った皮のような気がしてきました。まるっきり記憶が定かではないので、一時帰国された(実際には帰国する前だったけど)Nguyenさんに確認したところ、Vo? Ba'nh Go'^i というまるでそのままのものだそうです。これはやはりサイゴンでは見ないとのことで、Ba'nh Go'^i そのものがやはり北部の食べ物だからなのでしょうね。
 詰め方にはこつがあって、材料を入れすぎないこと、それから詰めたあと、皮の端に水を付けて閉じていくのですが、ここがギザギザの模様を付けるなるように指で型を付けていきます。この詰め方は、あとで揚げるときに中身が漏れないようにするため重要です。また、きれいに折り込んでいくと、見た目もきれいになります。

 

4.揚げる
 ベトナムの揚げ物はあんまり油を使わないのか、半分くらいつかるくらいで揚げることが多いようです。片面があがったらひっくり返して、もう片面を揚げる。そんな感じですね。でも、いつもそうかというとそうでもないようで、あとで出てきますが、料理屋さんでは大量の油を使います。こういうのは日本でも同じかな。
 大量に作ったバイン・ゴイをこの小さな鍋で揚げるのは大変で、ひたすら揚げ続ける感じですね。ベトナム料理って、下ごしらえに時間がかかるから、お昼を食べて、もう夕ご飯の準備を始めているような感じがします。なんか一日中、料理したり、食べたりしているみたいに。

 

5.完成
 今回、バイン・ゴイを日本人と一緒に作って食べるという企画をしてくれた東方大学日本語科のみなさんです。Nguyenさんは写真を撮る方に回ったので、写っていません。おかげで、僕だけが良い思いをしているように見えます(笑)。
 ベトナム料理の常で、大量の野菜を添えて出します。肝心のたれの方は、全然作り方を見ていなかったのですが、多分基本はヌック・チャムだと思います。ちょっと甘めでしたし。ベトナム料理の神髄はたれの使い方だそうですから、次回、もし機会があれば、そのあたりを聞いてみたいものです。
 今回のバイン・ゴイづくりは、当時ハノイにいたNguyenさんのおかげで参加できたものです。この場で改めてお礼を言わせていただきます。どうもありがとうございました。m(_ _)m

 ちなみに、街のバイン・ゴイ屋さんで食べると下のような光景が見られます。さすがに大量に作るから、壮観です。その店によって、好みのたれや調味料があるようです。
 ベトナムの一品料理屋さんって、概しておいしいような気がします。フォーもブン・チャーもバイン・ゴイも。

   

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