ソクチャン
  ソクチャンはカントーから35km位離れたメコンデルタ下流域の町です。ここはクメール系の人々が多く住むことで知られており、街を行く人々の肌は浅黒く、平均的なベトナム人とはちょっと違って見えます。もっとも、南部では長い間に混血や同化が進んでいるためか、あまり区別が付かないことも確かです。ソクチャンの街の見所としてはクメール博物館やコウモリ寺、陰暦10月14日に行われるボート競争などが有名です。
 ソクチャンへはカントーからバイクの後ろに乗せてもらって行って参りました。このあたりになると道路の状態はそんなに良くなく、疾走するバスやトラックにあおられて、ちょっと怖い思いもします。
 最初に行ったのは街の中心にあるクメール博物館。あまり訪れる人はいない閑散としたところでしたが、専属のクメール人の若い女性が説明をしてくれました。展示品はクメールの人々が日常使う生活用具から、冠婚葬祭に使う祭器、クメール人の生活習慣を図解した説明までいろいろあります。

 メコンデルタ地域にはクメール寺院がたくさんありますが、ボート競争とコウモリがいることで有名なコウモリ寺へと行って来ました。
 クメールの寺院はタイなどと同様インド文化の影響を受けていますので、中国文化の影響を受けて作られたベトナムの寺院とはかなり様子を異にします。水牛の角を思わせる屋根の形状はマレー系の建物との類似性も感じさせられます。
 周囲の森には体長が50cmを越えるようなフルーツバット(果物を餌にするコウモリ)が住み着いていて、その糞などで異臭が漂っています。見上げるとまるで大きな果物のようにコウモリがぶら下がっていて、壮観です。

 お寺に入ると若いお坊さまが挨拶をして寺の中の案内を始めてくれます。寺院の内部にはお釈迦様の一生を物語風に描いた絵が壁面を埋めていたり、寺の創立者をかたどった像が置いていたりします。お釈迦様の一生は日本のお寺にも水墨画で描かれたものがありますが、あれがもっと大きく派手になったような感じです。そうした絵についてもお坊さまが一つ一つ説明をしてくれるわけです。
 そうして、寺への喜捨をした人々のリストがあるのですが、それを見ると海外在住の越僑や中国、台湾人の名前もあったりして、必ずしもクメール人のためだけのお寺ではないようです(考えれば当たり前ですが)。
 クメールにしろ、ベトナムにしろ、無効のお坊さまは非常に気さくで、写真にも気軽に写ってくれます。こういうところは日本とずいぶん違って、今でも地域社会との関わりとか、仏教のありようとかがもっと生活に密接に結びついているのだろうなと思わせられます。

 ソクチャンで行われるボート競争についてはあんまり調べていないのですが、結構な盛り上がりを見せるようです。ボートの形状はここに載せたように細長いもので、これをメコン川に浮かべて速さを競うようです。しかし、なぜお寺にボートが置いているのか?何か宗教的な意味があるのか?よくわからないまま帰ってきました。

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