チャウドック
 チャウドックはカンボジアとの国境近くにあるメコンデルタの(ベトナムでの)上流側の街です。この街の近くで、メコン川は大きくティエンザン(前江)とハウザン(後江)に分かれます。
 サイゴンからはバスで約7時間、通常のメコンデルタ行きとは反対にミトーから上流側に道を取り、ドンタップ省を抜けてロンスエンへと至り、運河を北上してチャウドックへとたどり着きます。
 チャウドックのバスターミナルは街の中心部からは離れているため、シクロかバイクタクシーで行くことになりますが、ここでも結構吹っ掛けられたり、降りるときに交渉した値段よりも高く請求されますので、毅然とした態度というか、金を押しつけてさっさとホテルに入りましょう。いずれ、自分が紹介したと言って、紹介料をもらうのですから。
 チャウドックの街は小さく、すぐにまわれてしまいます。ここの市場は運河沿いに沿って広がり、生鮮食料品などが豊富に売られています。ここの市場の特長は華人が多いことでしょうか、市場の入り口には関帝廟等があり、華人人口の多さを示しています。華人商店や食堂には華人協会?の会員証が壁に貼られており、それとすぐ分かります。
 ある華人系の食堂で食事をしていたら、一人で暇だと思われたのか結婚はしているのか、この子はどうだ?とまたいつもの会話が始まってしまいました。そのうち、うちの子供の相手をしておいてと、小さな子を預けられる始末。まあ、良い暇つぶしではありましたけど。

チャムの人々
 チャウドックに向かうバスで一緒になったおじさんとフェリーを渡るときに話をしていて、名前を聞いたときの答えがザカリヤ。それは標準的なベトナム人の名前ではないですね?と聞くとムスリムだからと答えていました。続けて、とするとチャム人ですね?との問いにその通りだと言われ、初めてチャム人を名乗る人と出会ったことが分かったのでした。
 南部のベトナム人はクメールやチャムとの混血が進んでいると考えられるため、見た目ではその違いはよく分かりませんでした。ちょっと彫りが深いかなという気がしましたが。
 チャウドックの街にはモスクがあり、礼拝の時にはチャムの人々が集まるそうです。しかし、場所がどこかは確認できませんでした。チャムの人々は集まって住んでいるようですので、中心からは離れたところかもしれません。

サム山にて
 チャウドックの郊外には、メコンデルタには珍しく山があります。それがこれ、サム山です。サム山の麓にはいくつかの寺院があり、参拝客でにぎわっていました。参詣の時期になると境内は人であふれ返るそうですが、年末のこの時期は特に多いわけでもなかったです。
 このお寺は見た目がちょっと変わっていて、楼閣がどこかイスラム寺院を思わせるような形をしています。ミトーで見たお寺もそうでしたが、南部もメコンデルタまで来ると、クメールやチャムの影響を受けるのでしょうか?北部で見るお寺とはずいぶんと様変わりです。
 メコンデルタにそびえる山なんて滅多に登れないと思ったので、サム山に登ってきました。頂上まで道があるので、バイクタクシーでも行くことができるのですが、せっかくだから自分の足で登ってみました。道が分からなかったので、カフェで休憩しているときにそばにいた写真屋さんに聞いてみると、そばにいた物乞いの子に案内してこいと言い、小さな妹を連れたその子は、妹を背負ってお寺の後ろからサム山へと案内してくれました。サム山へ上る山道にはいくつかの祠があり、たくさんの休憩所がありました。
 山頂には警察の詰め所があり、本当の山頂からは写真が撮れませんでしたが、山頂付近から撮った写真が1枚目のモノです。広々としたデルタに水路が縦横に走っているのが見えます。ほんのちょっと行くとそこはもうカンボジア、陸続きの国境をこの目で見たのは初めてでした。

チャウドックの近郊
 チャウドック自体は小さな街なので、サム山に登ったあとは何をしようか困ってしまいました。シクロを借りて、ふらふらしようかなと声がかかるのを待ってぶらぶらすると、予想通り声がかかってきました。話を聞くと、みんなツアーのスケジュールを持っているのです。チャウドックからの観光コースは、近くのチャムの漁村を船で訪れるものから、クメールのお寺に詣るもの、ハーティエンまで行くものなど結構バラエティに富んでいました。翌日はもうサイゴンに戻る予定だったので、残念ながら試すことはできませんでしたが、時間があれば、そうしたシクロの運転手に声をかければ必ずそうしたツアーにつれていってくれるでしょう。
 チャウドックの近郊をいろいろつれ回ってもらって、田圃をみたいといったら写真のようなサム山を望む並木道につれて行かれました。こういう田園風景はのどかでいいです。近くの子供が無邪気に遊んでいて、外国人の闖入者をかまってくれるのでした。
 つれて行かれたときに気がついたことが一つ。チャウドックの街はデルタにあるので、地盤が非常に悪いのです。町中のほとんどの家が道路に面していて、裏に回ると高床式のように木を組んだ上に家が建っているのです。

 

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