ロンスエンの取り締まり
 旅行ガイドにはロンスエンの近郊はベトナムでもっとも自然に恵まれていると書かれています。僕は、それを確かめることはできませんでしたが、ロンスエンからチャウドックに向かう運河沿いだけでもそれを伺わせる光景を見ることはできました。
 しかし、ロンスエンはチャウドックへの行き帰りで途中で通っただけです。普通でしたら通っただけのところは地域情報として載せることはないのですが、ここではちょっとしたアクシデントがあったので載せることにしました。
 それはチャウドックからサイゴンへと戻るバスでのこと。運河沿いの道を疾走するバスが、時々道ばたに寄せて停まっては、屋根の上にテレビなどの物資を積み込んでいます。そのときは何をしているのだろう?くらいに思っていたのですが、ロンスエンのフェリー乗り場について分かりました。
 フェリー乗り場に着くといつもバスをいったん降りて、渡ったあとにまた乗り込むのですが、このときは気まぐれでそのままバスに残っていました。すると目つきの鋭い男たちがどやどやと乗り込んできたのです。そう、公安の密輸品検査です。座席の下のあちこちから荷物を取り出すと、車掌のおばさんに鋭い声で詰問しています。しばらく、言い争っていたようですが、いきなり、バスを発車させロンスエンの町に引き返させました。一体どうなるのだろう?サイゴンに無事に帰ることはできるのかと不安に思いながらも、時間的には余裕があったので、興味津々成り行きを見守っていました。
 しばらくバスは町中を走り、ようやく着いたのは警察署。そこで、どんどん荷物を下ろしていきます。その光景がおもしろかったので、写真を撮りたかったのですが、とても許してくれる雰囲気でなかったのであきらめました。車掌さんは警察署の中に連れて行かれ、いすに座ってうつむいています。バスのことは完全におばさんが仕切っていたようで、運転手は解放されたもののどうしていいかさっぱり分からないようで、とりあえず、フェリー乗り場に戻ることとなりました。
 フェリー乗り場に戻って、先に降ろした乗客がいるので、とりあえず対岸に渡ったものの車掌のおばさんがいない状態では運行できないようで、次のチャウドックからのバスがきたところでそれに乗り換えさせられ、サイゴンへと向かいました。バスはメコン川の対岸に1時間以上も来なかったわけですが、待たされた乗客たちは怒るでもなく、淡々と言われた指示に従っていたのが印象的でした。たぶん、それは日常的に起こる出来事なのでしょう。
 単に通り過ぎただけでしたが、こうしてロンスエンは強く印象に残ったのでした。


教訓
メコンデルタの国境側からサイゴンに向かうときはローカルバスは避け、ミニバスを利用する。
ベトナムでは余裕を持って行動しよう。何が起こるか分からないから。


 
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