ダラット
 ダラットはサイゴン北方300kmほどのところにある高原都市です。サイゴンやニャチャンからはバスで7時間程度。サイゴンとダナンからはプロペラ機も飛んでいて、1時間弱でこれます。
 町の歴史は新しく、フランス人生物学者のアレキサンドル・エリシンが最初にダラット近郊に町を作ることを発案しました。ここに載せたのがその場所ですが、今のダラットの町よりも風光明媚なところです。しかし、実際には、エリシンの考えたところよりも若干南に今のダラットの町が作られています。
 町の作られた経緯からも明らかなように、ダラットの町にはフランス植民地時代の建物がたくさんあります。
 ダラットの街は丘に囲まれていますので、そのフレンチコロニアル風の建築物が起伏のある風景にうまくとけ込んで、きれいな町並みを型作っています。また、街の入り口あたりにはフン・スアン湖という小さな湖があり、街の風景を引き立てています。この湖のそばにはゴルフコースもあり、休暇には外国人ビジネスマンがベトナムのあちこちから楽しみにやってくるそうです。
 一方、坂の非常に多い街ですので、シクロはおらず、移動としてはバイクタクシーに頼ることになります。フン・スアン湖のあたりは当然低地ですので、バイクの排気ガスがこもり、将来の公害を予感させられもします。
 ダラットは高地ですので、元々はキン族は住んでいなかったと思われます。フランスによって避暑地として開発されてキン族が入ってくるまで、このあたりは少数民族の居住圏でした。今でも、ダラット近郊に少数民族は住んでいますが、しだいにキン族の影響を受けているようです。
 ここに載せた写真は、ダラット近郊のラット村というマライ系の住民の住む村で子供たちが遊んでいるところを写したものです。この近郊の少数民族はフランスの宣教師の宣教活動によってキリスト教徒化しており、村の中心には大きな教会が建っていました。そこにはダラットから移ってきたというキン族の神父さんが住んでおり、村人の貧しい生活をいかにしたら救えるかと心を砕いていました。昔ながらに農耕、採集生活をしている彼らは現金収入の道がないため、キン族と比較して相当に貧しさを感じさせます。
 しかし、彼らが伝統生活から離れ、クリスチャン化することが本当によいのかは僕にはわかりません。ただ、彼らを助けようとしているのは、今のところカトリック教会だけなのも確かなのです。ベトナム政府は長い間、カトリック教会が彼らの元に戻るのを禁止していたようですが、前述のように今は神父さんが戻ることを認めています。
 ダラットは1500mほどの高原にあるため気温は年間を通じて20℃台前半に収まっています。そのため、平地のように暑さに苦しめられることは少ないのですが、朝晩は結構冷え込み、人々はセーターやジャンパーを着込みます。僕からしたら、そんなに着込むほどには感じられないのですが、やはり元々暑さに慣れた民族なのでしょう。
 そうして、ここに載せたようにせっかくのアオザイ姿もカーディガンを着込むことによってちょっと珍妙ななりになってしまいます。



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