ハノイは永らくベトナムの政治、文化の中心でした。今でこそ経済の中心はサイゴンへと変わっていますが、ハノイを知らずしてベトナムを知ったことにはなりません。

ノイバイ空港
 初めてベトナムに入った('95)のは香港経由のキャセイで、ハノイ、ノイバイ空港にでした。ノイバイ空港はこれが本当に一国の首都の玄関かと思うほど小さくて、みすぼらしいものでした。飛行機はターミナルから離れた駐機場にとまり、そこからターミナルまではバスで行くのですが、これがなんと神戸の市バス!!社内で日本語の広告がそのままになっているのを見たときには、何か力無く笑ってしまいました。その後、他の国で見るような大型のバスが導入され、また一つベトナム情緒がなくなってしまったのは、いま考えると少し残念です。あと3年もしないうちに現在建設中のターミナルビルが完成するので、ようやく玄関口の寂しさも解消されるでしょう。といっていたら、2000年現在ターミナルビルの建設はいっこうにはかどっているような感じがしませんでした。東南アジアの経済危機を影響を受けて、ほとんどストップしてしまっているようです。2002年の成田-ハノイ線の開通に間に合うか?

両替
 入国審査はあとで経験したサイゴンよりも楽ですが、やはりある程度の時間はかかりました。空港の外にでて、銀行の窓口に行ったら円からドンへの両替はできないと言われて愕然(1995年)。最初の旅行ではドルをあんまり持って来ていなかったので結構びくびくものでした。しかし、事情が分かるようになるとお金についてもそんなに心配する必要がないことがわかってきました。銀行などは結構早く閉まるし日曜はやっていませんが、街中には力強い金屋さんがたくさんあります。そう、あの金を売っているお店は両替もするのです。それも日本円も受け付けてくれるのには驚きました。レートは店によりますが決して悪くはないと思います。ただ、日本円からドンに換えるよりもドルからドンに換えた方が率はいいようです。

市内までの移動手段
 両替ができないのに愕然としたものの、気を取り直してハノイ市街に行こうとすると、寄ってくる白タク白タクが皆30ドルだとか好き勝手なことを言って閉口しました。おまけに周りの人間もそれに同調して助けてくれるそぶりもないし、歩き方にあると書いていたミニバスが見つからず、そのあたりの相場感覚がまだ分からない僕は、つい18ドルで手を打ってしまったのでした。おまけに着いたら高速道路の料金まで請求されて、初めてのベトナムの印象はあまり芳しいものではありませんでした。
 今(1996〜2000)は市内へ向かうミニバスもたくさんあり、3ドルで乗れるのでこういう目に遭うことも少ないでしょう。ただ、ミニバスのチケットカウンターのお姉さんはひたすらタクシーを勧めてきます。タクシーもどんどん値下げされて市内まで10ドル。まあ、そんなに高いわけでもないのですね。ミニバスのカウンターは入国審査を終えて、税関の検査に行くまでの間にありました。
 ところでミニバスの値段ですが、チケットを買わずにミニバスまで行って聞くと、これが人によっては急に5ドルになったりするところがまたベトナムです。市内中心部までは別料金だとか言うのですが、当然ポケットマネーになります。しかし、そういう苦情が多くなれば、また会社もそういう人を首にしたりで時事刻々とそのあたりは変わっていきます。だから厭なことがあったらすぐに抗議しましょう。
 安くて便利なこのミニバスはベトナム航空国際線の事務所までしか行ってくれません。でもそこはベトナム、2ドルほど払えばホテルにも寄ってくれるのでした。当然この2ドルは運転手の副収入となっています。多分1ドルでも大丈夫じゃないかな?

どこに泊まるか?
 一時期のハノイ(95年くらいまで)はホテル難で泊まるところを探すのが大変でした。しかし、この一年ほどで雨後の竹の子のごとくミニホテルが乱立し、泊まるところに困ることはなくなりました。また、料金の方も競争原理が働いて低下傾向にあるようで、一時期定宿だったフーザーという政府系のゲストハウスは、最初に泊まったとき(95年)が25ドル以上したのに今年(97年)は20ドル程度まで言い値が下がっていました。
 旧市街などには、きれいなミニホテルが林立しているので適当に選べばいいのではないかと思います。あと、空港からのミニバスやタクシーでは運転手がバックマージン目当てで営業していますからそういうところに連れていってもらうのも手であります。
 最近、日本人に人気なのが中心部にあるViet Thang Hotel (71 Hang Luoc, Hoan Kiem TEL 8-258044)。ここの方は以前広島で働いていたとのことで、日本人にとても親切だとのことです。多分10部屋ないくらいこじんまりしていて、とても家庭的な感じらしいです。今年('98)、知り合いが泊まっていたので訪ねてみましたが、確かに親切そうなおばさんでした。ただ、料金は25ドルくらいでとりわけ安いわけではありません。まあ、ハノイは全体的に高めなのですが、そのなかでも割合しっかりしたミニホテルには外国のビジネスマンも泊まっています。
 最近思うのですが、政府系のゲストハウスはやめておいた方が無難です。というのは、彼ら従業員にはサービスの精神というのはないからです。フーザーというゲストハウスはロケーションが良くて気に入っていたのですが、電話は取り次ぎ間違える、FAXや伝言はちゃんと渡さない、そのうえそれを指摘しても決して間違いを認めようとしないのです(間違いを認めないのはベトナム人一般に当てはまるかも知れない)。というわけで、僕はフーザーに泊まるのをついに止めました。他の政府系のゲストハウスについては知らないけど、多分同じではないかと思います。
 ところで、乱立しているミニホテルですが、これの経営にはお金がかかります。したがって、ほとんどの場合家族に越僑がいるか、親族に政府の役人がいます。一般のベトナム人はそんなお金を持ちようがないのです。

色のない街
 冬にいくと特にそう感じるのですがハノイは色彩に乏しい街です。サイゴンに先に行って、この街に着くとなんと寂れた街だろうと感じると思います。天気の方も、だいたいはどんよりと曇っていて、沈み込みがちな気分をますます沈み込ませてしまいます。
 しかし、何度かこの色のない街に来ていると、それが逆にしっとりと落ち着いているという風にも感じることができるのです。サイゴンの喧噪に疲れたら、ハノイに来てみるのも面白いと思います。サイゴンに比べるとハノイは田舎町です。でも、ハノイの人は少しだけ人見知りをして、サイゴンのように陽気に近づいてくる人は少ないけど、お近づきになると親切で楽しい人も多いのです。
 この冬(99正月)ノイバイ空港に降り立って、冬支度をした人々を見たとき、やはりベトナムは広いなと思いました。そして、北部と南部で違うのも仕方ないなと。

ホーアンキエム
 ホーアンキエム湖は湖と言うにはあまりに小さく、フランス統治時代にはプチラック(小湖)と呼ばれていたそうです。現在はハノイ市街地の中心をなしており、この周辺に商店や旅行会社が集まっています。ホーアンキエム(還剣湖)にはその名が示すとおりの故事があります。15世紀、明の圧制に苦しんでいたベトナムではレロイというあるベトナム人がこの湖で大きな亀から剣を授かり、明を撃退してベトナムの平和を取り戻したというのがそれです。レロイは明を撃退した後、この湖に再び来て剣を戻したとのことなのです。
 いまのホーアンキエムは市民の憩いの場になっています。最初にハノイに行ったとき、この湖の湖畔で休もうとした僕は次から次へとやってくる子供達の相手に疲れはててしまった記憶があります。ハノイは非常に大きな都市なので周辺から人が流れ込んでいるのですが、そうした中に親と離れた子供達が多数いるのでした。彼らは親のない子供の証明書みたいなものを身につけており、その証明書にはこの子からものを買って上げてくださいと英語で書いてありました。
 そういう場でも彼らはしたたかです。絵はがきとかおみやげ物を売っているのですが、相場を知らないものには平気で何倍という値段で売りつけます。すぐ近くの本屋さんで6000ドンで売っているものを$3〜4で売っていたりします。最初はそこまでぼっているなんて思わなかったから、2割位まけさせて満足していたら、本屋に入って愕然。勉強になりました。

バーディン広場
 バーディン広場は第二次大戦後(というか日本の敗戦後)ホー・チ・ミンによってベトナムの独立が宣言されたところで、政府関係の建物が集まっているハノイの中心部です。
 かのホー・チ・ミン廟もここにあります。しかし、このホー・チ・ミン廟はホー・チ・ミンらしくない建物で、僕は嫌いです。そんなものを建てるくらいなら、病院とか学校を建てる方に金を回した方がホー・チ・ミンの遺志に沿っていると思うからです。

ブン・チャー
 ブォイ市場の中ではハノイ名物のブン・チャーを初めて食べました。ブン・チャーは米粉で作った麺をゆで、ヌックマムを何かで割った出し汁につけて食べるつけ麺です。写真に写っているのは、麺の上にのせるおかずで、焼き鳥とか春巻きなんかが普通のようです。どこでも市場には食堂が集まっていて、言葉が分からなくてもここで食べて行けとうるさいこと。でも、ここのブン・チャーは本当に美味しかったです。ハノイに行かれたら試してみてください。
 それから、今回(99正月)初めて知ったことが一つ。これまで、ハノイには暑い時期にしか行ったことがなくて、冷たい付け汁で食べるブン・チャーは暑いときに食べるモノだと信じ切っていたのですが、冬にはこの付け汁が暖かいのでした。熱いとまではいきませんが、冬のブン・チャーもお試しあれ。
 ところで、このつけ麺のブン・チャーは北部の特産のようで南部では見たことがありません。で、日本にあるベトナム料理屋さんはほとんどが南部の料理だから、日本でも食べることができないということになります。誰か日本で食べられるところを知っていたら教えてください。

犬肉料理
 これまでハノイに何回か行っていながら北部名物の犬肉料理を食べたことがありませんでした。犬肉は陰暦の月初めに食べるとその月の幸運が逃げてしまうということなのですが、なぜかいつも月初めに当たっていたのです。それが、今回、月の後半ということで、特に是非とも食べたいと思っていたわけではないのですが、食べることになりました。
 で、正直な感想ですが、もういいです。匂いがきついうえに、独特の味でちょっと胸焼けがしてしまいました。一口食べたあとは、もう箸が進みませんでした。
 犬肉料理はタイ湖のほとりが有名なのですが、今回は旧市街にある犬肉料理屋さんに行きました。7つの調理法がコースで出てくるということでしたが、3つでダウンです。
 犬肉料理は元手がほとんどかからないためか非常に安く、来ている人も比較的お金のない人が多いようでした。

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