サイゴンの夜
 サイゴンの夜はバイクの洪水です。人々は涼をとるために外に出て、バイクを持っている人は何をするわけでもなくバイクを流して夜を過ごします。写真の女性は、レロイ通りの近くでそこら辺に置いているバイクに座って涼をとっていた姉妹です。そのあたりで行商のおばさんからお菓子を買っていたら、だまされていると思ったのかお節介を焼いてくれたのでした。ちょっと期待をした人、残念でした。
 何をするわけでもなく人がバイクで流していることから分かるようにベトナムの夜はそんなに娯楽がありません。もともと僕はその手の情報に疎いのですが、夜の12時頃にサイゴンの街を流すと昼の顔とは違って死んだように静かになっています。夜遊びをしてホテルに帰ってみるとシャッターが降りていて途方に暮れたという人も少なくないはずです。こういう状況ですとサイゴンに留学している人間などは遊ぶところを探すのが大変だったようですが、最近は経済的な発展のためか飲むところもだいぶできてきているようです。
 僕のサイゴンでのナイトライフ体験にはレックスのダンシングホールがあります。ここはアオザイ姿の若い女性が付いてくれて、一緒にチークとか踊ってくれます。ここに連れて行ってくれたのはニフティのベトナム会議室で有名なあるアンチョイ男性で、GWにたまたま出張で滞在されていたところに落ち合って、連れていってもらえることになったのでした。ちなみにアンとは食べる、チョイとは遊ぶことを意味するベトナム語で、いわゆる遊び人を指すのですが、実際のアンチョイ道には深いものがあります。このときも女性へのチップの額から、扱い方まで教えていただき今でも私の心の師であります(^_^)。
 またライブ付きのカフェというものにも入ってみました。ここに載せているのがそのカフェの写真です。

Nha^.t Nguye^.t (8AM-4AM)
74B Hai Ba` Tru+ng Q.1 TP. HCM

 友人と一緒に前を通りかかると手招きをされて、音楽もあるよと言うので入りました。一階は健全なカフェの店構えですが、二階に上がるとちょっと薄暗い照明の部屋で、正面に小さなステージがあってバンドが演奏しています。よく見るとなんとロンゲのベトナム人がエレキを掻き鳴らしていました。部屋の反対側にはプールバーがあり、なんとこれも驚くような超ミニスカートの女の子がビリヤードを楽しんでいました。多分サイゴンの流行の先端なんでしょうね。流行の先端を行く人はどこでもそんなに変わらない格好をしているわいと思ってしまった。ここはちょっと高くて一番安いウィスキーの水割りが3ドルくらいでした。でも、結構にぎわっているんですよね。どこからそんな金が出てくるんだか。
 この店は健全だなあと思っていたら、いつの間にか横に女の子が侍る店と化していました(99.1)。お店に入って、適当な席に着くと、女の子がやってきて勝手に横に座ります(気に入らないと断っても良いようですが)。で、自分たちも何か頼んでいいかと聞いてくる。日本のキャバレーみたいなモノなのでしょう。英語もできる子もいますが、できない子も多いのでベトナム語をやっている人には練習になると思います。女の子の中には連れ出しを求めてくる子もいます。なんか退廃がまた進んだ感じですね。お店を出るときには、女の子にチップを渡さなくてはいけないので、用意しておいて下さい。短時間だったら、5万ドンというところでしょうか?日本人はけちと思われているので、気前よくするのもいいかも。台湾人は気前がいいことで有名ですが、意外にもベトナム人のチップの多さがすごいようです。何でも、ベトナム人は見栄を張るので、こういうときにはケチらないそうです。
 サイゴンのナイトライフは他のベトナムの都市に比べれば非常に多い方なのでしょうが、世界一の歓楽街(と実際言われているらしい)、新宿歌舞伎町を抱える日本人にとっては物足りないかもしれません。一般的なのはディスコとカラオケ、ショーのようですが、大抵早い時間に終わってしまい、夜遊びがしたい日本人は遊ぶところを血眼になって探すようです。ファン・グー・ラオの方などに朝方までやっているパブなどがあるようですが、詳しくは調べていません。サイゴンは半年たつとすごく変わっている街なので、いつの間にかそういう店もできているようでした。

サイゴンの喧噪
 ところでサイゴンに行かれた方はその喧噪とエネルギーに魅了されることが多いようですが、僕は実はそれほどサイゴンのことが好きではないのです。別に嫌いということはないのですが、サイゴンは都会すぎてゆっくり出来ない気がします。また、ベトナムの中でサイゴンだけが異常に発展してしまって、僕にとってサイゴンはベトナムでは非常に特殊な街に思えて仕方ないのです。
 サイゴンは都会であるため、いろいろな人がいます。外国人相手に金をもうけようとしている人間も多いです。そのためいやなことに合うことも多いかもしれません。シクロにぼられたとか土産物屋でぼられたとかはどこの街でもあることですが、ひったくりや暴力的な事件はサイゴンの方が合う確率が多いです。自分の身は自分で守る。やはりこの気構えは必要だと思います。
 サイゴンの人はサイゴンの街に誇りを持っています。統一後、ハノイが首都にはなりましたが、経済的には群を抜いて別格の地位を保っています。ベトナム語は方言の違いが日本語ほどではないにしろかなりあり、慣れないとよく分かりません。ハノイ弁が標準とされてはいますが、サイゴンっ子は、北部の発音をださいと思っているようです。
 統一会堂(旧大統領府)を見学したときのこと、説明員がここはコミュニストが爆撃して出来た穴があったところだとか、ここでコミュニストに対しての防戦の指揮を執ったとか、コミュニストという言葉を多用したのには奇異な感じがしました。何か、今でもコミュニストとは一線を画していると自己主張しているような感じがしたのです。もちろん、今はベトナム社会主義共和国で、彼らは公務員のはずなのに。
 サイゴンの博物館で結構面白いと思ったのは、戦争犯罪博物館でした。これはよく枯葉剤の被害ということで、ホルマリン漬けの奇形児が取り上げられているところです。もちろん、その実物は衝撃的で悲しいものなのですが、それよりも現在も続く反革命の動きを取り上げた展示が一番興味を引きました。入り口近くにもうけられたその展示室には、和平演変に気を付けようというスローガンとともに、ベトナム国内に持ち込まれたビラや雑誌、武器などが実物あるいは写真で飾られていました。裁判の日付などを見ると極最近もそうした外から持ち込まれた反政府活動が行われているようでした。国内に残っている人はどう思っているかなのですが、あまりそうした活動は表立ってないようです。ひとつには公安の締め付けもあるでしょうし、それよりも皆生活あるいはお金のことにかかりきりで、そんなことをしている暇はないのかもしれません。


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